今宵、ある刑務所で選ばれし優秀な囚人たちを集めて5年に一度の囚人大感謝祭が開催される…!
その名も


「それでは所長、挨拶をお願いします。」


「囚人の諸君!この度はお集まりご苦労様でございます。我が刑務所も今年で100周年の節目の年を迎え、これも皆様方が犯罪を犯し律儀に収監されているおかげでございます。貴方達のおかげで私たち刑務所職員も懐が潤うというもの。そこで今回のビンゴ大会では国にも秘密裏で豪華景品を用意させていただきました。それがこちら!!!」


「今回は100周年ということで、超大判振る舞い!!一番早くビンゴした方には、シャバ開放の特典が与えられます!!」
「この機会を待ってたんだ。」


「このビンゴ大会で1位さえ獲ることができればシャバに戻れるんだ…外に出たらもう偽仮想通貨売買なんて辞めて全うに働いて幸せに暮らすんだ…」

「それでは次に、この刑務所で最も刑務態度が良く優秀な、囚人委員長の挨拶です。」

「おいおい、とうとうお出ましだぜ。」

「また戻ってきたのかよ、懲りない奴だな…」


「まず、署長をはじめとし、看守の方々、この度はこのような盛大な大会を開いてくださり誠にありがとうございます。また、私たちのような悪人にチャンスを与えてくださり最終決定を致した署長の懐の深さには感服する次第でございます。貴方様のような方がこの暗雲立ち込めた日本の未来を切り拓いていくのだと私は確信しております。囚人の皆様にしましても、署長の器量の大きさに感謝しつつ日々この刑務所を良くしていきましょう。」

「うむ、素晴らしいスピーチで感動した!看守!!彼に温かいお茶をあげなさい。」

「何がだよこのボケカスが、思ってもないこと言いやがって。」

「しかし、あの顔見たか?あいつ執行猶予中に模範囚ぶりをアピールするために白黒ボーダーのタトゥーを彫ったらしいぜ。」

「ああ聞いたぜ。そこまで媚びへつらって何になるんだか、ああはなりたくないぜ。」

「しかもあいつ執行猶予中に模範囚ぶりをアピールするために、役所行って戸籍上の名前を『”模範 囚”』に変えたらしいぜ。」

「怖っ」

「それではビンゴ大会を開幕する!!!」



「然るべき最初のナンバーは48!!!!!」

「よっしゃあ!あったぜ!!!」


「続いて、23!!!」

「おし!!あるぜ!!!」


「ん?もしかしてこれ全部ナンバー俺が言う感じ??かったる。」

「クソッ…全然こない…」
時間が経ちビンゴが出ない中、ある囚人に動きが…

(クソッ…あと8番が来ればビンゴになるのに全然こねぇど…)


(このままじゃ他の奴にビンゴされちまうでねぇかよぉ… おし!こうなったら8番空けちゃうど!どうせバレねぇべ!)

「ビ、ビンゴしたどぉ!!!」

「お!やっとビンゴしてくれたか!脱獄おめでとう!ちょっとカード確認させてね…」

「…って、あ~あ、こいつはやっちゃってるよねぇ~!!?僕8番なんて言ったかなぁぁぁぁぁあああ??????言ってないよねぇぇぇぇぇぇえええええ??????なのになんで8番が空いてるのかなぁぁぁぁぁあああ???そういう奴はどうなるかわかるよねぇぇぇぇぇぇえええええ??????」


「88888888888!!」

「そうやってニコ動のコメントみたく88言っとけや、バカタレが。」
その後も虚偽の申請をするやつが続いた…
顔の形を変えられる


「これじゃあ永沢君の進化系だと思われちゃうよ~~~」
顔に69のタトゥーを彫られる


「これじゃあク〇ニ好きの変態野郎って思われちゃうよ~~~」
鼻ピアスつけられる


「これじゃあマリックの娘だと思われちゃうよ~~~」
ほぼ全員が虚偽の申請をし、残されたのは2人になった。

「はい、72番ね~」


何このビンゴカード?
30分もやって3個しか空いてなかったら惨めな気持ちになるのよ。
俺のビンゴカードだけ何の希望もないわ~。これ低学年の子なら大泣きしてお情けで景品貰えるレベルだわ。実際、町内会にそんな子いたのを思い出しましたわ。

「はい~次67~~~」

「ビンゴしました。」

(最悪だ、終わった…)

「おぉ~~!!!模範囚くん、君が一番乗りか!私は嬉しいよ、シャバに出ても頑張るんだよ!!」

「署長。私はシャバに出る気はありません。」

「なぬ!!どういうことだ?詳しく聞かしてくれないかい?」

「私など6等の景品で十分でございます。まだ未熟な人間うえ、しっかりと刑期を全うして正しい人間に更生できるよう、これからもこの刑務所でお世話になろうと思っている所存でございます。なので署長!これからも私めにご指導ご鞭撻のほどをお願い致します。」

「よく言った!!!偉い!!!それでこそワシの囚人だ!君には特別に3等のフルコースもつけてやろう。何か食べれないものはあるか!?」

「光り物NGです。」

「よし!先に会場で待ってるぞ、料理長準備しちゃってぇぇ!!!」

「よかったね外に戻れて。君は運がいい。」


「君に一つ教えてあげよう。何故こんなにも優秀な僕が捕まってるか分かるかい?」


「……は??」

「ワイドショーで千葉の怪鳥の特集を長々とやっていただろう?あの怪鳥は僕が放ったんだ。」

「……え??」

「3.5mのニシキヘビだって僕が逃がしたし、中国の謎の種だって僕が送ったし、大井競馬場の馬だって何回も逃がしてる。僕がいるから日本のマスメディアはネタに困らないし、ミヤネ屋だって数字を稼げているんだ。」

「ただの暇つぶしでやってるんだよ、全て。看守にこびへつらってるのも、優等生を演じてるのも、顔にタトゥーを彫ったのも…。一つ予言してあげよう。次、大井競馬場から馬が逃げ出すとき、その時にはもうこの刑務所は破滅を迎えているだろう。それまで、この退屈な日々をせいぜい楽しんでくれよ……」




いったいあいつは何だったんだろう…

きっとあいつは更生なんてしないだろう。模範囚でいることに悦を感じてる猟奇的な人間だから…

それでも俺には関係ないことだ。これからはこの命を大切にして全うに生きていこう…
