まずはこうだということを理解していただく必要がある。
それではサバ味噌を見てみましょう。
煌びやかな味噌を纏ったサバが煌々と輝いているのが見て取れます。
この切り身を口に入れた瞬間…複雑な旨味が口の中いっぱいに広がるのが容易に想像できますよね…あぁ食べたい!!ご飯と一緒にカッ食らいたい…!!!
大して塩サバを見てみましょう。なんだこれ?
「気のままの僕を味わってくれ!」と言わんばかりのシンプルな装いが何ともみすぼらしいじゃないですか。
まあ味は…うまいよ。別にうまいけどテンションが上がり切らないというのが塩サバというもの。知れてる味と言うか奥行きがないというか…
仮にお母さんが「今日は塩サバよ!!」と意気揚々と叫んでみたところで子供がゲームの手をとどめて食卓につくことはないでしょうし、食べ盛りな学生さんも人生経験のなさも相まって、塩サバでは米をどう食べ進めればよいか分からなくてガッツリ食べることはできず、夜な夜な家族の目を盗んではカップ麺をすすることでしょう。
サバ味噌だったらもっとお米を食べ進められたのに…!と塩サバを食卓に出した母親を恨みながらもそんな自分が惨めに感じて自己嫌悪に陥り、涙を流しながら麺をすすっている学生さん。不幸の元凶塩サバ。
例えば、貴方が定食屋で塩サバ定食を食べている人を見かけたとする。むしろ塩サバ定食を食べてる人間の方が多かったとする。だとしても決して塩サバが人気だとは思わないでほしい。彼らは塩サバの方が値段が安いから甘んじて塩サバを選択している訳であって、サバ味噌を食べたいと思いながら塩サバを食べるしかない方々なんだ。世の中にはそういった方が一定数いますし、現に僕もその一員ではある。
もし両者の値段が均一なのであれば、人民は皆サバ味噌をむさぼり食べるはずだ。
サバだってそうだ。好きで塩サバになった訳ではない。もし仮に死はもう確約されているものであるとして、死というものが逃れられない現実であるとして、最後塩をまぶされるかまたは味噌でまみれるかを選択しなければならないのなら圧倒的に後者を選ぶはずだ。塩にまぶされただけの身体を野ざらしにされたいなんて考えはないはずだ。
自分の死後が塩サバだと感づいたサバ。彼のうつろな表情からはこれから塩サバになるという絶望感が窺い知れる。
というようにサバ味噌と塩サバとの関係には大きな開きがあると思うのです。
そして、そんなサバ味噌になれなかった塩サバを見ると僕は何だか不憫に感じるのです。
サバ味噌という強力なライバルがいて、いくらあがいても太刀打ちできない状況。そこにサバ味噌は優越さえ感じながらあぐらをかいている始末。そんな現状を変えてあげたい…
だからこんなにも可哀想なサバ味噌になれなかった塩サバを…
サバ味噌にします。
そして驕り高ぶっていたサバ味噌には…
塩サバになってもらいます。
確約された未来があったサバ味噌のそのベール(味噌)をはがし、塩サバに塗りたくることで逆転現象。つまり革命を起こします。反旗を翻すのだ!塩サバ!!!
という訳で既製品のサバ味噌と塩サバを購入してきました。
これから互いの姿が入れ替わるなんてことも知らずにサバ味噌は横柄な態度で、逆に塩サバは当然のように30%引きになっています。
サバのベールを剝がす
いよいよ作業工程に移っていきます。サバの身を包んでいるその味噌を剝がしていきましょう。
まずはサバ味噌をお皿に移しまして…
その身体を覆っている味噌を全てきれいに拭き取っていきます。
お味噌をお皿に移したのち、優しく水洗い&味噌を微塵も残さずキレイに拭き取りましたら…
剝がせました。
恥ずかしいね!!今まで味噌で隠していた身体が露わになって恥ずかしいね…!!
ほら見てごらん。
塩サバが貴方のことを見ているよ??散々下に見ていた塩サバが高みから見物しているよ…??恥ずかしいね!!!
また、塩サバと比較してみるとサイズ感が一回り小さいことが見て取れます。
上記画像をご覧の通り、サバ味噌の方が小さめの切り身となっており味噌で自身の小ささを隠していた事実を明かしてしまいした。人間でいうシークレットブーツみたいな役割をお味噌が果たしていたのだと知ることもできましたね。
サバ味噌だったものを焼く
綺麗に味噌を拭き取りましたら、次は塩サバにしていく工程に移っていきます。
間髪入れずに油をしいたフライパンに、今では何者でもないただのサバを敷きます。
そして今回塩サバの根幹を担ってくれますアジシオを手に持ったら、今まで驕り高ぶっていたサバに目掛けて…
オラオラオラオラオラあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
塩サバになれやああああああああ!!!!!
気持ちを込めて塩を振りまきます。
今まで自分が高貴なサバ味噌であるがゆえに、見下してきたであろう塩サバに自身が様変わりしようとしている現実をどう受け止めようとしているのか話しかけてみたものの、結局は切り身。返答あるはずもなく淡々と塩を塗りたくられるだけの存在です。
裏返してみると綺麗な焼き目がつきました。もちろん裏面にもアジシオを振りたくり、サバ味噌であった頃の自我を消してあげましょう。もうそろそろ自分の運命を受け入れてくれよ。
そして逆側も十分に火を通したら…
元々はサバ味噌だった塩サバの完成です…!!!
どうでしょうかこの見た目…少し焦がしてしまいましたが数分前までサバ味噌だったとは思えないでしょう…?このサバも自分の運命を受け入れられていない様な、そんな陰鬱とした雰囲気を醸し出しております。
ちなみにこちらの流れは後日クックパッドにも掲載させていたしますので、お時間があればそちらの方も拝見して頂けたらと思います。
塩サバをサバ味噌にする
今見てもらったのはあくまでも前座です。続きまして真打の登場…!!塩サバのサバ味噌化をお見せいたします。待っててくれ…今から救済するからね…
なお、先程拭き取りましたサバ味噌だったものの味噌は勿論のごとく使用しません。新たな門出を祝う塩サバにそんなおさがりの味噌は着させない。僕が責任をもってサバ味噌の味付けに取り組みます。
という訳でフライパンに塩サバと調味料(砂糖大さじ3と1/2、酒100ml、水300ml)を投入し一緒に煮立たせる。
サバの身がほぐれないように調味料を溶かし混ぜ、灰汁をお玉で随時すくい取る。
ある程度煮立たせた後、キッチンペーパーで落し蓋をしてぐつぐつと煮立たせます。汁気が少なくなるまで弱火から中火で時間をかけ味を染み込ませたら…
完成です!!!
こちらが念願の以前は塩サバだったサバ味噌です。どうでしょうか??
棚ぼた的に塩サバからの脱却を行えた現サバ味噌はなんだか嬉々としており、画像の露光量も高めになっております。
食べてみる
ということで無事調理を終えましたので、実食のフェーズに入りたいと思います。まずはサバ味噌から食べたいところではありますが、元サバ味噌の塩サバから頂いてみましょう。
いただきます。
…あぁなるほどね。なるほどなるほど。
はっきり言うとサバ味噌だった過去の自分をぬぐい切れていないようなそんな味がします。
僅かに味噌感がサバに残っており、塩サバとは言い難い味です。貴方は塩サバとしての生を全うしなければならないのに、過去の栄光(味噌にまみれてた時代)にしがみついているような、そんなどっちつかずな味になっています。お前はもう塩サバなんだよ。
続いて本命、塩サバだったサバ味噌を食べてみます。
いただきます。
うんまあ~い。
まずは旨くなってくれてありがとうと感謝を申し上げたい。ひと手間加えてまずかったら意味がないからね。
なんでしょう。この味噌とのマッチング感…そしてこのサバから溢れ出る旨味…元々塩サバにあったサバ味噌への羨望と塩サバである自分への劣等感…そんな中訪れたサバ味噌になれるチャンス。千載一遇のチャンスを逃すまいと彼なりに懸命にもがいた結果、新たなる旨味成分が自然発生したんだと私は思いたい。これは塩サバの逆襲だよ。
味は元々の塩味もあるため、普通のサバ味噌よりもしょっぱさはあるのですが結果的にそれが米と合うのよ。とにかくご飯が進む進む。これは塩サバでは見かけることのない光景であり、学生さんも食卓で塩サバが出てきた際にはお母さんへのケアをしつつも、味噌と一緒に煮てしまいましょう。そんでもってご飯を窯ごと平らげたらいいんだよ。
まとめ
という訳で驕り高ぶったサバ味噌を塩サバに、日陰者とされてきた塩サバをサバ味噌にしてみました。
今後も塩でまみれた哀れな子たちを救うべく、塩サバをサバ味噌にする救世主としてこの活動を継続していきたいと思います。
皆様も生活に余裕があるようでしたら、店頭で塩サバを購入してはサバ味噌にしてあげてください。
彼らを救えるのは私たちです。塩サバはあなたの助けを待っています。
それでは失礼いたします。